「仕事ができる」
生きる実力として、これ以上に重要なことはないかも知れない
『生きる実力』イコール『仕事力』と言っても過言ではないくらいだ
エホバの証人を離れ、おれは自分の居場所を見つけようとした
そして、苦労した
人の輪に入ろうとしたり、ウケようとしたり、モテようとしたりした
そもそも、ごく身近な人間関係に苦しんできたおれたち「エホバ2世」だ
おれは普通の、そして良好な人間関係の作り方への関心がとても高かった
そして、それを作れることが、世間でうまくやっていく秘訣だと思っていた
人の気持ち、会話の仕方、コミュニケーションのコツを知りたかった
それに加えて、おれは不安だった
大学生になった頃のおれは、まだエホバの証人から離れていなかった
「今のままではいやだ」と熱烈に思ってはいたが、「ではどう生きるか」がなかった
「依存する場所を失くして、生きていけるのか」という不安もあった
だからというわけではなかったが、おれは『心理学』を専攻した
振り返れば、おれが『心理学』を専攻したのは必然だったように思う
『心理学』を専攻した理由
当時は「とても関心があるし、それ以上に関心がある分野が他にない」と思っていた
つまり、自分の知的好奇心で選択したというのが実感だった
でも、やはりそれっておかしい
大学の専攻を知的好奇心で選ぶのは、研究を志している場合だろう
これは「大学教育のそもそも論」の話ではない
高等教育を受けることを選ぶのは、就職や生涯年収の比較でメリットがあるからだ
だから、「どんな仕事をしたいのか」を抜きにして大学の専攻を選ぶ人は限られる
『実家の支払い能力がしっかりしていて、遊民的な生活を望み、それを許されている人』
おれは、少なくともそうではなかった
「遊民的な生活を望み」だけは当てはまったかも知れないけど
つまり、おれの好奇心は知的好奇心ではない
「これがおれの問題を解決してくれるんじゃないか」という期待に対するもの
いうまでもなく、『心理学』によって自分の悩みを解決したかったのだと思う
『心理学』は大いに役に立った
おれは、エホバを離れる際に生じる色々な葛藤、不安や罪悪感、そして怒りをなんとかするために、『心理学』を頼った
- 『心理学』は「母性」には「保護と安心をもたらす」側面と、「子を取り込み支配する」側面があることを教えてくれた
- 『心理学』は「依存対象から離れ、自立する際には、行こうとする気持ちに呼応するように、依存対象から見捨てられる不安が生じる」ことを説明してくれた
- 『心理学』は、感情についての色々な現象についている名前をおれに教えてくれた
それによって、おれはある程度冷静でいられた
だから、『心理学』はおれが生きるために大いに役に立ったと思う
ただし、働いて稼ぐこと以外については、だ
『心理学』がお金にならなかった理由
4年間の学部生活の終わりが見えてくると、同じ専攻の友だちは就職活動を始める
おれは『心理学』を続けるために、2年間の大学院に進むことにした
『心理学』を仕事にするといえば、『臨床心理士』だった
今のおれは、皮肉を込めて、当時のおれをこう評価する
「4年間も心理学を勉強したのに、治らなかった人」
心理支援は立派な仕事だ
そこで働く人たちも、立派な人が多い
つまり、主体的にやる気を持って人に尽くす人
悩んでいる人のために全力で、支援をしている人はたくさんいる
おれもそういう人はたくさん知っている
むしろ、おれだって駆け出しの頃は特に情熱を持って心理臨床をやっていた
ただし、どれだけ一生懸命に仕事をしていても、勉強していても、目が自分に向いていたことを否定することはできない
おれはおれのために『心理』の勉強や仕事をしていた部分がある
おれを例にするとややこしくなってしまうが、自分のために仕事をしていると『仕事の質』に限界があるように思う
理由は2つある
- 一つは、クライアントへの貢献とか、「お客様の満足度」などへの関心が高まりきらないということ
- もう一つは、自分の悩みが解消されていくことで、仕事への熱意が薄れていくこと
例えていうなら、前者は「己の野球道には興味があるが、集客やファンサービスには興味がなく、チームワークの意識も低い」野球選手
後者は「そもそも『有名になってチヤホヤされたい』が夢だったので、少し野球で成功してチヤホヤされ出したら、もうあっさり欲望に負ける」野球選手
「心理学」はそもそもしっかり稼げる就職に繋がりにくい
しかし、おれの場合は「それ以前の問題」だった
大学を卒業して、就職して、社会人になっても「おれの問題」を中心に大事なことを選んでいた
しかも、そのことに気づいてもおらず、興味関心とか好奇心で選んでいると勘違いをしていた
コンプレックスが、人生の大事な選択に大きく影響してしまうと、大体ロクなことにならない
後から思っても、どうにも、どうしようもなかったことだってあるけれど
【仕事ができる人】になるには、コンプレックスを脱却し、「おれはどう生きるか」を掴むことが肝心だということだ
おれのように、色々伸び悩んで後から思うのでは、ちょっと効率が悪いから
他の人には、大きな選択の際には「自分はなぜこれを選ぶのか」「自分の問題や悩みのためではないか」と考えてもらいたい
以上です
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